みずきさんの歌から5首

(Wed)

Posted in 題詠blog2011鑑賞

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題詠blog2011を走り終えた皆さまの歌を鑑賞させていただきます。
今回は、みずきさんの歌から5首を選ばせていただきました。

025:ミステリー
真夜のかほ映す鏡のミステリー死よりも蒼く壁に浮かべり


「死よりも蒼く」がおどろおどろしい空気を纏って一首を立ち上げている。昔なつかしの学校の怪談などを思い出すが、ここでは実際に真夜中に自分の顔を鏡に映しているのであり、更に恐ろしいのは鏡に映ったその顔が「死よりも蒼い」ということを、本人が知っているという事実なのである。


044:護
護りえず水になりたる命あり小さき地蔵に春の雨降る


「小さき地蔵」とは水子地蔵のことだろうか。生きものは死ねば土に還るイメージがあるが、生まれ得なかった命は水へと還っていく方がしっくりとくる。それは生命の泉と言うべき場所なのかもしれない。命あふれる春という季節に降る雨が、祈りのように淡く降り注いでいる光景が眼に浮かぶようである。


046:奏
CDの奏づる「愛の喜び」に少年は酔ひ少女は眠る


美しい曲に容易く酔い痴れる少年と、その横で目を閉じたまま寝息を立てている少女。一般的に、少女のほうが精神的な成熟が早いと言われる。「愛の喜び」はクライスラーの曲だが、対となっている「愛の悲しみ」へとトラックが移ったら、少女は目を覚まし、入れ替わりに少年が眠りに就くような気がしてならない。


085:フルーツ
フルーツを乱切りにして角ごとの秋を味はふ一人の夜は


乱切りとは、文字通り形を揃えることなく大体の大きさを揃えて切ることで、カレーなど野菜を切るときに頻繁に使われる。フルーツは、と考えるとそういえばりんごも柿も大体の切り方は決まっていて、乱切りというほど形を崩すことはない。あえてフルーツをざくざくと切り、じっくりと玩味する。ともすれば千々に乱れゆきそうな己の心を静かに抑えている秋の夜半のようだ。


087:閉
春閉づる扉もノブも吾が心 指紋をつけぬ朝がまた来る


春に封印する思いがある。それは自分できっぱりと決めたことで、覆ることは恐らくないのだろう。だが、淡い逡巡はそれでも生まれる。そこに扉があったこと、扉にはノブも付いていたことを忘れるのには、まだ時間がかかりそうだ。(何へのかはわからないが)未練、と一括りにしてしまうには勿体ない、うつくしい情景である。

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